「遊びと人間」を読んで
遊学者のきょうさんq_ohhhです。
最近、「遊ぶ」を研究した古典を見つけたもんで、つらつら読んでた次第。
カイヨワ。
フランスの社会学者だ。
なんでも遊びから人類史は作られる、という壮大な理論をつくった方。
遊びを4つのカテゴリーに分けて、人類史を語っている。
4つの遊びが、入れかわり現れる。
それぞれの時代に即した「遊び」が、支配層の儀式になる。
僕らの時代なら「競争」。
古代なら「仮面」。
4つの遊びをまとめておくよ。
- アゴン(競争)
- アレア(偶然)
- ミミクリー(模擬)
- イリングス(めまい)
下の説明がわかりやすいから読んでくれ。
カイヨワは、人類の遊びを「意志⇔脱意志」「ルール⇔脱ルール」という2つの軸でとらえました。そしてこれを直交させることで、4つの類型をみちびきました。
意志+ルールは、参加者がルールの下で明確な意志を持って参加する類型を言います。例えばチェスなどがそうですね。これを「アゴン」(競争)といいます。チェスなどのボードゲームの他、競技スポーツ一般がここに属します。
これに対し、ルールはあるものの、参加者の意志で進行するわけではない遊びの類型もあります。例えば、ギャンブル。「勝ちたい」という意志は皆共通ですが、結果はそうした意志とは関係ありません。一方で、ルールは妥協の余地なく厳密に適用されます。これを「アレア」(偶然)と呼びます。
一方、ルールの側が否定されるタイプの遊びもあります。例えば子供のごっこ遊びは、積極的な意志のもとで遊ばれるものの、勝敗は付きません。これを「ミミクリー」(模擬)と言います。おままごとなどが該当しますし、演劇もここに含まれます。
そして、意志とルールのどちらも否定される遊び。これらに対してカイヨワは「イリンクス」(めまい)という呼び名を与えました。ブランコからジェットコースターまで、たいへん大きなカテゴリーになってきます。
僕らの時代に「古代」は回帰する
まあカイヨワの結論は、「競争の時代たる資本主義の私たちは〜」みたいな感じで、あんまオモロくないんだけども、僕が思ったのは、現代は
- ミミクリー(模擬)
- イリングス(めまい)
の時代を迎えているよねってこと。
コスプレやらネット配信やらユーチューバー、みんな何者かにミミクリー(模擬)して、集まって、アイドルのコンサートの一体感たるや、まるで古代の祭儀さながら。
音楽はイリングス(めまい)だね。
いやあ古代が帰ってきとるんよ。
これ、古代だ。
彼女らは、古代の神々なんだ。
ミミクリー(模擬)とイリングス(めまい)の時代が始まろうとしてるぞ。
いきつく先はVRか
仮面をつけ大麻を焚いて、神々の世界へと没入した古代が、また再び始まろうとしている。
僕なんか、コスプレもゲームもノータッチ人間。
なんだけども、コスプレやゲームから、もっともっと豊穣な世界が広がるのは、もはや自明。
ミミクリー(模擬)とイリングス(めまい)。
VRなんか、まさにこの2つのために神器だよね。
仮想空間への没入。
そんでさ、VRって単体であればめっちゃ安いね。
3000円くらいで買える。
これをどうやらiPhoneあたりに設置すればサクッと観れるらしい。
僕は試しに買ってみようと思う。
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古代の終焉
これ以上は、今日はもうあまり書かないけども、2500年前の古代ギリシャの頃には、ミミクリー(模擬)とイリングス(めまい)、終わった模様。
古代の、麻薬と仮面の怪しい感じが消え去ったよう。
確かにそんなイメージあるね。
オリンピックとかアゴン(競争)とアレア(偶然)そのものだしね。
「遊びと人間」カイヨワ著・清水幾太郎訳 岩波書店 1970年
ほとんどギリシャ全土で、バッカス信仰(※きょうさんより。古代のやりたい放題の祭り)は、まだ、信者の陶酔、人事不省、神がかりを作り出すために、ダンスとリズムと酩酊とに依存していた。
しかし、このような眩暈、模擬は克服されていった。
それはもう都市国家の中心的価値であるどころか、遠い昔の思い出に過ぎなかった。
肉体がぐったりと寝床に横たわっている間に、精神が地獄に降り、あるいは、天を駆けたりすることは、もう思い出の中にあるだけであった。(※きょうさんより。これがVRで蘇る。)
※中略
オルペウスは、地下の世界へ死んだ妻を探しに行ったが、連れ戻すことはできなかった。
死に仮借がないこと、死に打ち勝つ魔術があり得ないことを悟り始めていたのである。
ギリシャ人は、合理主義精神をもつようになっていったんだね。
ただ、これへの反撃が、今もう始まっているということ。
こんな可愛い反撃。
合理化した世の中を嫌ったニーチェは、このことをどう思うだろう?
ところでニーチェは、バッカス信仰に大変興味があったよう。
酒と麻薬と仮面の酒池肉林ね。
まあエロいよね。
古代が蘇ると、エロへの考え方も変わるのかもな。
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