原田まりるさんのキャッチーな哲学入門
きょうさん@q_ohhhですよ。
サクッと買って読みました。
読みやすいですねえ。
女の子の恋の話から始まるもんだから、一気に話に入れる。
相談役のニーチェのキャラがいいね。
変人っぽさが出てる。
ニーチェ、キルケゴール、ショーペンハウワー、サルトル、ハイデガー、ヤスパースが現代人に乗り移って、京都をうろちょろしてるんですね。
この哲学者たち、いわゆるノミナリスト。
ノミナリストというのは、幻想を信じない人たちです。
ノミナリストについて、詳しくはこっちに書いてあります。
日本ではなぜか、ニーチェを筆頭にノミナリストの哲学者が人気なよう。
「生きる意味」に真っ向勝負を挑むからなのか。
小難しい衒学的なこともいわないしね。
ニー哲は、ノミナリストの彼らと女子高生のアリサが、くっちゃべる内容です。
「ソフィーの世界」という哲学解説書があったけれど、これも思春期の女の子が哲学を学んでいく内容。
ちょいと似てるね。
ニー哲のいいとこ、悪いとこ
ニー哲を読んで、僕が「おー」と感心したのは、「実存は本質に先立つ」を非常になめらかに解説しているところ。
ちょいワル、及びちょいエロオヤジのサルトルと女子高生アリサの語る場面。
p211より
道具は、理由あって、存在する。つまり、本質あって、実存するのだ。
しかし人間は違う。
理由があらかじめ用意されていて、存在しているのではない。
まず、生きている。
存在しているという事実があるのだ。
僕はさっき、ふと思ったんですが、哲学って若い子らに需要あんのかな。
それこそ「生きる意味は?」と問う、感性豊かな若い子ら。
「生きる意味は?」はハマれば抜け出せなくなるからなあ。
そんな時に、さっきの引用部分を読めば、スーッと心も軽くなるだろうね。
「生きることに意味も理由もない」とザックリ言いきってるんだからね。
ここはホント、著者の原田まりるさんは非常になめらかに解説してる。
それでも、全体を通して「ん?」と思ったのは、自己啓発に流れてる点。
これは日本の哲学界のクセですね。
そうするしかない、というのもわかる。
だって読者いないよ、哲学は。
1970年代までは、哲学も「フランス構造主義」なんていって左翼言論人に読まれてたみたい。
難しそうなコトバで世界を説明するわけですね。
それがカッコよかったみたい。
だからホントに需要あったみたいですよ。
哲学のくせに、本も雑誌も売れてたらしい。1970年代までは。
でも、それが無意味な念仏、ホントにただのファッションだったんだと発覚したのがソーカル事件。
難解さというファッションに身を包んで、数式や哲学用語を連発、強引に一般論に結びつけて、その実なにも語っていない哲学者が明るみになったんですね。
難しいコトバでかっこつけてるだけ。
今なら「中二病」といわれて一蹴されるやつですね。
しかし中二病ってコトバは偉大だなあ。破壊力ハンパねえわ。
「知」の欺瞞――ポストモダン思想における科学の濫用 (岩波現代文庫)
ま、だから哲学は、需要の入り口をなくしちゃってるんだよね。
自己啓発から入らないと売れない。これは業界の悩みでしょう。
でもそれでも、「哲学と自己啓発は別物だ」と僕は主張しますよ。
だってただの自己啓発なら、哲学書みたいなあんな難解なこと描く必要ないやんけ。
イデアとノミナルの対立。これが哲学の骨格。
イデアが光。ノミナルは闇。
だからニーチェは闇の方。
アテナイの学堂で、アリストテレスが示す現実世界。
プラトンは、天上の光を指さす。 pic.twitter.com/UdcHEmHDax— きょうさん@遊学者 (@q_ohhh) November 13, 2017
このプラトンとアリストテレスの対立から、哲学は説明しなきゃいかん。
これが根本。この対立がすべて。天上のプラトンと地上のアリストテレス。
そして、常に勝利してきたのがプラトンのイデア論。
キリスト教の神学にも取り入れられました。
イデア論は、現代では経済理論の柱でもある。
ないものを「ある」とするのがイデア論なんだから、イカサマ経済つくるときなんて最高に相性がいいわけ。
たとえばじゃぶじゃぶマネーの株価引き上げなんて、イデア論そのもの。
いまのアメリカ・日本・ヨーロッパの経済は、イデア論によって作られてるんですよ。
「哲学に意味はない」なんていってる諸君!
そんなわけないでしょうが!
生活の制空権を握ってるのは哲学だよ!
めっちゃ高いとこだけど!
プラトンのイデアは、現代では経済理論、たとえば「合理的選択仮説」にもつかわれるし、「恋愛」というイデオロギーにもつかわれている。
ないはずのものを「ある」と言いくるめる錬金術がイデア論。
— きょうさん@遊学者 (@q_ohhh) November 13, 2017
「ないものはない。それはただそう呼んでるから『ある』ことになってんだろ、ほんとはないだろ」というのがノミナリストの方。
ニーチェの主張でもある。
ニーチェは、ソクラテス・プラトンを敵視した。
現代でいえば、経済理論や、恋愛神話をクソミソにけなした、ということ。#哲学 #ニーチェ— きょうさん@遊学者 (@q_ohhh) November 13, 2017
だからニーチェは現代でいえば、テレビの経済学者や恋愛ソングばかりのJPOPにたいして「嘘ばっかつくな!お前らの幻想にはウンザリだ!」と吠えたてた、というのが正しい。
だからニーチェは、哲学の本当の姿を求めて古代ギリシャ思想を研究してたんですね。
ニーチェは元々、古代の文献をあつかう文献学者です。
この著作が最初期の論文集。
のちのニーチェの萌芽が見られます。
このなかでもニーチェは、プラトンを否定してますね。
まだ若いニーチェなんですがね。
これはやっぱり自己啓発なんて次元の話ではない。
確かにニーチェを筆頭にノミナリストの哲学者は「人間の生き方」やらあるべき態度、倫理を説くことはあります。
それには理由があって、目的はアンチクリストなんですね。
「キリスト教をなにがなんでも許さない!絶対に破壊してやるウジ虫どもが!」という心情の爆発が、人間の生き方を語るノミナリストたちの根本にあるわけです。
逆分析しているわけです。キリスト教が発明した人間の心の支配方法を。
「早くその洗脳を抜け出せよ」と。
「もう2度と不幸になりたくないんだ」と。
キリスト教は邪教です! 現代語訳『アンチクリスト』 (講談社+α新書)
日本人、このことがわからないとマジでヨーロッパ人の二の舞になるんじゃ。
ヨーロッパの暗黒の中世の再現が、日本を舞台に起こり始めている。
日本にはキリスト教が流れこんでます。
「社会」、「恋愛」、このへんの苦しいやつ、全部キリスト教が作りました。
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自己啓発を卒業して、本来の哲学へ戻ろうよ
だから僕が『ニーチェが京都にやってきて17歳の私に哲学のこと教えてくれた。』略してニー哲の著者・原田まりるさんに言いたいことをまとめると。
- イデア(光、天)とノミナル(闇、地)の対立こそが哲学説明の骨格
- ニーチェを筆頭とするノミナリストの自己啓発的発言は、すべてアンチクリストのため
つきつめていうと、より大きな目線で哲学を語ろう!ということかな。
僕は、原田まりるさんをダメ出しするつもりはないですよ。
なんつったって、まず哲学なんて超マイナーなことやる人少ないし、文章から性格の良さ滲みでてるし、同年代だし(僕は1986年生まれ)ね。
同じ場所に立ってるのなら、より建設的な意見出したいです。
僕も、別視野からの意見をもらいたいし。
まったく別の視座からの意見は消化に時間かかりますが、自分をアップデートできる大事な機会。
というか、それが哲学ですから!
『ニーチェが京都にやってきて17歳の私に哲学のこと教えてくれた。』略してニー哲のいいところは、文学性あって読み物としてのレベルが高い。
難しいことを平易に語るって、そうとう難しいですから。
哲ガキ的まとめ
しっかし哲学って本当に需要少ないなあ笑
僕、哲学のツイートは反応もらえないけど、仮想通貨のツイートは反応もらえるんですよ。
なんか複雑な気分ですわ笑
それでも毎月わりと「哲学」のGoogleワード検索はあるんですが。
たぶん、入り口がわからんすぎてそっから需要が伸びないんですよね。
「これから需要をつくっていく」くらいの覚悟がないといかんですね。
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