原田まりる姉さんの「ニーチェが京都にやってきて17歳の私に哲学のこと教えてくれた。」を読んで。

原田まりるさんのキャッチーな哲学入門

きょうさん@q_ohhhですよ。

サクッと買って読みました。

読みやすいですねえ。

女の子の恋の話から始まるもんだから、一気に話に入れる。

相談役のニーチェのキャラがいいね。

変人っぽさが出てる。

ニーチェ、キルケゴール、ショーペンハウワー、サルトル、ハイデガー、ヤスパースが現代人に乗り移って、京都をうろちょろしてるんですね。

この哲学者たち、いわゆるノミナリスト。

ノミナリストというのは、幻想を信じない人たちです。

ノミナリストについて、詳しくはこっちに書いてあります。

日本ではなぜか、ニーチェを筆頭にノミナリストの哲学者が人気なよう。

「生きる意味」に真っ向勝負を挑むからなのか。

小難しい衒学的なこともいわないしね。

ニー哲は、ノミナリストの彼らと女子高生のアリサが、くっちゃべる内容です。

「ソフィーの世界」という哲学解説書があったけれど、これも思春期の女の子が哲学を学んでいく内容。

ちょいと似てるね。

ニー哲のいいとこ、悪いとこ

ニー哲を読んで、僕が「おー」と感心したのは、「実存は本質に先立つ」を非常になめらかに解説しているところ。

ちょいワル、及びちょいエロオヤジのサルトルと女子高生アリサの語る場面。

p211より

道具は、理由あって、存在する。つまり、本質あって、実存するのだ。

しかし人間は違う。

理由があらかじめ用意されていて、存在しているのではない。

まず、生きている。

存在しているという事実があるのだ。

僕はさっき、ふと思ったんですが、哲学って若い子らに需要あんのかな。

それこそ「生きる意味は?」と問う、感性豊かな若い子ら。

「生きる意味は?」はハマれば抜け出せなくなるからなあ。

そんな時に、さっきの引用部分を読めば、スーッと心も軽くなるだろうね。

「生きることに意味も理由もない」とザックリ言いきってるんだからね。

ここはホント、著者の原田まりるさんは非常になめらかに解説してる。

それでも、全体を通して「ん?」と思ったのは、自己啓発に流れてる点

これは日本の哲学界のクセですね。

そうするしかない、というのもわかる。

だって読者いないよ、哲学は。

1970年代までは、哲学も「フランス構造主義」なんていって左翼言論人に読まれてたみたい。

難しそうなコトバで世界を説明するわけですね。

それがカッコよかったみたい。

だからホントに需要あったみたいですよ。

哲学のくせに、本も雑誌も売れてたらしい。1970年代までは。

でも、それが無意味な念仏、ホントにただのファッションだったんだと発覚したのがソーカル事件。

難解さというファッションに身を包んで、数式や哲学用語を連発、強引に一般論に結びつけて、その実なにも語っていない哲学者が明るみになったんですね。

難しいコトバでかっこつけてるだけ。

今なら「中二病」といわれて一蹴されるやつですね。

しかし中二病ってコトバは偉大だなあ。破壊力ハンパねえわ。

ま、だから哲学は、需要の入り口をなくしちゃってるんだよね。

自己啓発から入らないと売れない。これは業界の悩みでしょう。

でもそれでも、「哲学と自己啓発は別物だ」と僕は主張しますよ。

だってただの自己啓発なら、哲学書みたいなあんな難解なこと描く必要ないやんけ。

イデアとノミナルの対立。これが哲学の骨格。

このプラトンとアリストテレスの対立から、哲学は説明しなきゃいかん。

これが根本。この対立がすべて。天上のプラトンと地上のアリストテレス。

そして、常に勝利してきたのがプラトンのイデア論。

キリスト教の神学にも取り入れられました。

イデア論は、現代では経済理論の柱でもある。

ないものを「ある」とするのがイデア論なんだから、イカサマ経済つくるときなんて最高に相性がいいわけ。

たとえばじゃぶじゃぶマネーの株価引き上げなんて、イデア論そのもの。

いまのアメリカ・日本・ヨーロッパの経済は、イデア論によって作られてるんですよ。

「哲学に意味はない」なんていってる諸君!

そんなわけないでしょうが!

生活の制空権を握ってるのは哲学だよ!

めっちゃ高いとこだけど!

だからニーチェは現代でいえば、テレビの経済学者や恋愛ソングばかりのJPOPにたいして「嘘ばっかつくな!お前らの幻想にはウンザリだ!」と吠えたてた、というのが正しい。

だからニーチェは、哲学の本当の姿を求めて古代ギリシャ思想を研究してたんですね。

ニーチェは元々、古代の文献をあつかう文献学者です。

この著作が最初期の論文集。

のちのニーチェの萌芽が見られます。

このなかでもニーチェは、プラトンを否定してますね。

まだ若いニーチェなんですがね。

これはやっぱり自己啓発なんて次元の話ではない。

確かにニーチェを筆頭にノミナリストの哲学者は「人間の生き方」やらあるべき態度、倫理を説くことはあります。

それには理由があって、目的はアンチクリストなんですね。

「キリスト教をなにがなんでも許さない!絶対に破壊してやるウジ虫どもが!」という心情の爆発が、人間の生き方を語るノミナリストたちの根本にあるわけです。

逆分析しているわけです。キリスト教が発明した人間の心の支配方法を。

「早くその洗脳を抜け出せよ」と。

「もう2度と不幸になりたくないんだ」と。

日本人、このことがわからないとマジでヨーロッパ人の二の舞になるんじゃ。

ヨーロッパの暗黒の中世の再現が、日本を舞台に起こり始めている。

日本にはキリスト教が流れこんでます。

「社会」、「恋愛」、このへんの苦しいやつ、全部キリスト教が作りました。

合わせて読みたい

合わせて読みたい

自己啓発を卒業して、本来の哲学へ戻ろうよ

だから僕が『ニーチェが京都にやってきて17歳の私に哲学のこと教えてくれた。』略してニー哲の著者・原田まりるさんに言いたいことをまとめると。

  • イデア(光、天)とノミナル(闇、地)の対立こそが哲学説明の骨格
  • ニーチェを筆頭とするノミナリストの自己啓発的発言は、すべてアンチクリストのため

つきつめていうと、より大きな目線で哲学を語ろう!ということかな。

僕は、原田まりるさんをダメ出しするつもりはないですよ。

なんつったって、まず哲学なんて超マイナーなことやる人少ないし、文章から性格の良さ滲みでてるし、同年代だし(僕は1986年生まれ)ね。

同じ場所に立ってるのなら、より建設的な意見出したいです。

僕も、別視野からの意見をもらいたいし。

まったく別の視座からの意見は消化に時間かかりますが、自分をアップデートできる大事な機会。

というか、それが哲学ですから!

『ニーチェが京都にやってきて17歳の私に哲学のこと教えてくれた。』略してニー哲のいいところは、文学性あって読み物としてのレベルが高い。

難しいことを平易に語るって、そうとう難しいですから。

哲ガキ的まとめ

しっかし哲学って本当に需要少ないなあ笑

僕、哲学のツイートは反応もらえないけど、仮想通貨のツイートは反応もらえるんですよ。

なんか複雑な気分ですわ笑

それでも毎月わりと「哲学」のGoogleワード検索はあるんですが。

たぶん、入り口がわからんすぎてそっから需要が伸びないんですよね。

「これから需要をつくっていく」くらいの覚悟がないといかんですね。

合わせて読みたい

スポンサーリンク